【世界遺産】「文化遺産」と「自然遺産」の違いって?

POINT
文化遺産顕著で普遍的な価値などを有する文化財のこと。
自然遺産顕著で普遍的な価値などを有する自然のこと。

イグアスの滝

世界遺産とは

世界遺産とは、世界遺産条約(正式名称:世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)に基づき、「顕著で普遍的な価値」などを有する有形の不動産をいう。認められると、UNESCO(ユネスコ/国際連合教育科学文化機関)の世界遺産リストに登録される。

無形文化遺産とは

世界遺産に登録できるものは、有形の不動産に限定されている。

一方、UNESCOでは、無形文化遺産の認定も行っている。無形文化遺産とは「無形文化遺産の保護に関する条約(無形文化遺産保護条約)」に基づき、芸能・社会的習慣・伝統工芸技術など、保護すべき無形の遺産をいう。

日本では、和食・和紙・能楽・歌舞伎・雅楽などが登録されている。

【世界遺産】自然遺産と文化遺産の違い

世界遺産は下記の3つに分けられる(詳しくは下記)。なお、( )内は2019年時点での登録件数である。

  1. 文化遺産(869件)
  2. 自然遺産(213件)
  3. 複合遺産(39件)

対象の違い

世界遺産の文化遺産と自然遺産は、登録できる遺産の対象が違う。文化遺産の対象は文化財、自然遺産の対象は自然である。

文化遺産の対象となるのは、記念物・建築物・遺跡・文化的景観といった文化財である。すなわち、人よって作り上げられた遺産といえる。

文化遺産の例
  • タージ・マハル(インド)
  • ケルン大聖堂(ドイツ)
  • モヘンジョダロの遺跡群(パキスタン)
  • 原爆ドーム(日本) 
タージマハル(インド)

タージマハル(インド)

一方で、自然遺産の対象となるのは、地形・風景や絶滅の脅威にさらされている動植物の生息地といった自然である。すなわち、自然によって作り上げられた遺産といえる。

自然遺産の例
  • キリマンジャロ国立公園(タンザニア)
  • イエローストーン国立公園(アメリカ)
  • グレート・バリア・リーフ(オーストラリア)
  • 屋久島(日本)
キリマンジャロ公園(タンザニア)

キリマンジャロ公園(タンザニア)

なお、上述した複合遺産は、文化遺産と自然遺産の両要素を持った遺産である。

複合遺産の例
  • メテオラ(ギリシャ)
  • ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群(トルコ)
  • ブルーマウンテン山脈とジョン・クロウ山地(ジャマイカ)
  • マチュ・ピチュの歴史保護区(ペルー)
メテオラ(ギリシャ)

メテオラ(ギリシャ)

登録基準

世界遺産として登録するためには、登録基準(i)~(x)のうち、少なくとも1つの基準を満たす必要がある。

これらのうち、満たした基準に応じて下記のように分類される。

  1. (i)~(vi)の基準を満たす → 文化遺産
  2. (vii)~(x)の基準を満たす → 自然遺産
  3. 両者の基準を満たす → 複合資産
世界遺産の登録基準
文化遺産自然遺産
(i)人間の創造的才能を表す傑作である。(vii)最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
(ii)建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値感の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。(viii)生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
(iii)現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。(ix)陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。
(iv)歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。(x)学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。
(v)あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)
(vi)顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。

参考:公益社団法人日本ユネスコ協会連盟「世界遺産の登録基準」

2013年、文化遺産への登録が決まった富士山(正式名称:富士山―信仰の対象と芸術の源泉)は、上記(iii)(vi)の基準を満たしている。当初は自然遺産としての登録を目指していたが、ゴミの不法投棄や開発の問題などが障害となり、候補から外れたという経緯もある。