【キリスト教】「カトリック」と「プロテスタント」の違いって?
- いずれもキリスト教の宗派のこと。
カトリック | ローマ教皇をトップとする宗派で、統一的な組織がある。聖書の教えに基づいているが、聖書に載っていない教えもある。聖職者は神父(男性のみ)で、結婚は許されない。幼児洗礼があり、洗礼名が授けられる。 |
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プロテスタント | カトリックから分離した宗派で、統一的な指導者・組織はない。教えは聖書の記述を重視する。教職者は牧師(男女)で、結婚は許されている。幼児洗礼はなく、洗礼名は授けられない。 |
記事の目次
キリスト教の宗派
キリスト教はイエスを救世主と信じる宗教であり、仏教・イスラム教と並ぶ、世界三大宗教の1つである。
「キリスト教」といっても、さまざまな宗派が存在している。特にカトリック(ローマ・カトリック)(約50%)・プロテスタント(約22%)・東方正教会(約11%)の3つを三大宗派という(2016年時点の数値)。
参考:東京基督教大学「日本のプロテスタント教会(教団・教派)の現状と分析」表1
カトリックとプロテスタントの共通点
宗派が違うとはいえ、カトリックとプロテスタントはキリスト教であることに変わりはない。そのため、下記のような共通点も多い。
- 唯一神Godを拝む
- 三位一体(さんみいったい/神には父・子・聖霊という3要素があるが、本質は一つ)の考え方
- イエスを神の子(=キリスト)と信じる
- (基本的に同じ)聖書 など
カトリックとプロテスタントの違い
プロテスタントの中には、細かな宗派が存在している。それらは千差万別であるため、すべてについては言及できない。以下では大まかな傾向として、カトリックとプロテスタントの違いについて簡単に説明していく。
歴史
プロテスタントは16世紀、宗教改革(※1)をきっかけとしてカトリックから分離してできた宗派である。よって、カトリックのほうが歴史が長く、プロテスタントのほうが歴史が浅い。
1 もとはカトリックの修道士であったマルティン・ルターが、教会の扉に「九十五カ条の提題」(カトリック教会が販売していた免罪符への抗議)を掲げたことにより始まった。
聖書と教義
キリスト教にとっての聖典は、聖書(『旧約聖書』および『新約聖書』のこと)という。すなわち聖書は、キリスト教の教えのよりどころである。
カトリックの教義には、聖書に載っていないものもある。一方でプロテスタントでは、聖書の記述を重視する。
例えば、カトリックには聖人信仰(※2)・マリア信仰(※3)がある。そのためカトリックの教会には、聖人や聖母マリア像などが置かれている。
2 崇敬すべき者として、教会が公認した人物(例:聖ペトロ・聖パウロ)を信仰すること。
3 イエスの母であるマリアを特別な存在として信仰すること。
ところが、それらは聖書の中に記載がない(もしくは乏しい)ので、プロテスタントには聖人信仰・マリア信仰はない。そのためプロテスタントの教会には、聖人や聖母マリア像などは置かれていない。
カトリックには、7つの秘跡(神の恩恵にあずかる儀式)がある。プロテスタントではこれらのうち、洗礼・聖餐(もしくは洗礼・堅信)を除き、秘跡としては認めていない。認めていないものは、人間がつくったものと考えているためである。
- 洗礼:新しい信仰生活に入るため、水で清めること
- 堅信:より信仰を強めるため、按手(あんしゅ/人の頭の上に手を置く)と聖香油を受けること
- 聖餐(せいさん):キリストの「最後の晩餐(ばんさん)」を記念する儀式
- 告解(こっかい):神と司祭(聖職者の役職の1つ)の前で、自分の罪を告白すること(※4)
- 病人(病者)の塗油:病人に聖油を塗り、罪のゆるし・病の回復を願う儀式
- 叙階:聖職位(司祭・司教など)を授けること
- 結婚(※5)
4 カトリックの教会には告解室があるが、プロテスタントの教会には告解室はない。
5 カトリックでは離婚は認められていない(カトリック信者同士が教会で挙式し、夫婦生活を始めている場合のみ)。一方、結婚が秘跡ではないプロテスタントでは、正当な理由があれば離婚が認められている。
統一的な指導者・中央集権的な組織の存在
カトリックにはローマ教皇を頂点とする、中央集権的な組織が存在している。一方で、プロテスタントには統一的な指導者はおらず(※6)、中央集権的な組織も存在しない。そしてプロテスタントは、考え方が違えば次々と分かれていく傾向にある。
6 プロテスタントには「万人司祭説」という、信者はすべて平等という教えがある。
聖職者・教職者
カトリックの(儀式の執行や信者の指導など、神聖な職務にあたる特別な存在)は神父という。神父は尊称であって、司祭などの正式な職名ではない。神父は男性に限られ、結婚は許されていない。さらに修道院があるので、修道生活(修道士や修道女が、一定の戒律のもとで送る共同生活のこと)がみられるみられる。
プロテスタントの教職者(カトリックの聖職者と似たような職務にあたるが、万人司祭説より特別な存在としては扱われない)は牧師という。こちらは正式な職名である。牧師は男女問わず(教派にもよる)、結婚も許されている。聖書の中に「男も女もない」と記されているためである。基本的に、修道生活はしない。
幼児洗礼と洗礼名の有無
カトリックとプロテスタントは、洗礼を受けて信者になるという点では同じである。しかし幼児洗礼や洗礼名(クリスチャン・ネーム)の有無については違いがある。
カトリックには幼児洗礼があり、洗礼の際には聖人の名にちなんだ洗礼名が与えられる。一方で、プロテスタントに幼児洗礼はない。洗礼では信仰の表明を重視しているので、まだ信仰を表現できない幼児は洗礼を受けられない、と考えられるためである。さらに、洗礼の際にも洗礼名は与えられない。
まとめ
カトリック | プロテスタント | |
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歴史 | カトリック ―(宗教改革によって分離)→プロテスタント | |
教義 | 聖書以外も重視 | 聖書の内容を重視 |
統一的指導者 | ローマ教皇 | いない |
中央集権的な組織 | あり | なし |
聖職者(教職者) |
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幼児洗礼 | あり | なし |
洗礼名 | あり | なし |