「旧約聖書」と「新約聖書」の違いって?

POINT
旧約聖書ユダヤ教とキリスト教で共通する教義や信仰の模範が書かれた正典。
天地創造や神から授けられた掟などが書かれた書物。
イスラム教でも啓典の一部とされている。
新約聖書キリスト教における正典。旧約聖書と新約聖書を合わせて1つの聖書としている。
旧約聖書を「古い契約」とし、イエス・キリストによる「新たな契約」が書かれた書物。

机の上の聖書

ユダヤ教とキリスト教とイスラム教の歴史

キリスト教の成り立ち

キリスト教の成り立ち

3つの宗教は「ヤハウェ」という同一の神を信仰しており、その起源はユダヤ教から始まる

ユダヤ教はパレスチナ地方で遊牧生活をしていたイスラエル民族(のちのユダヤ人)が、異民族からの攻撃や支配を受ける中で神「ヤハウェ」を信仰し団結を高めていった。

紀元前539年、バビロニアに支配を受けていたユダヤ人が解放され、聖書が整えられユダヤ教の形ができた。

紀元4年頃、ユダヤ教徒としてイエスが誕生し、ユダヤ教の厳しい戒律を否定するイエスの教えが広まる。ユダヤ教ではメシア(救世主)が現れると信じられており、イエスの死後、イエスがメシアであると信じる人々がそれを否定するユダヤ教から分離し、キリスト教が発足する。

610年頃、アラビア半島のメッカにてムハンマドが天使の啓示を授かり、預言者(神の言葉を預かったもの)として教えを広めイスラム教が生まれる

すでに確立していたユダヤ教・キリスト教の教義では不十分とし、ムハンマドを最高で最後の預言者として、ムハンマドの言葉を骨格とした宗教として成立した。

この3つの宗教は同じ神を信じるという深い結びつきがある一方、考え方の違いなどか
ら対立してきた歴史があり、複雑に影響を与え合って成り立っている。

3つの宗教の正典

聖書の成り立ち

聖書の成り立ち

正典とは?
教会や教団が公認している、教義や信仰の模範について書かれた文書のこと。

モーセが神より授けられた律法とその歴史が刻まれた書物が、ユダヤ教における唯一の聖書である「タナハ(=旧約聖書)」である。

キリスト教では、「旧約聖書」とイエスの教えが書かれた「新約聖書」を合わせて聖書とし、正典とした。

イスラム教では、預言者ムハンマドの言葉を記した「クルアーン(コーラン)」を正典とし、「旧約聖書」の一部<モーセ五書>や「新約聖書」の一部<福音書>、<詩編>の4つを啓典(預言者に下された神からの啓示)に加えている。

正典
ユダヤ教タナハ(旧約聖書)
キリスト教旧約聖書新約聖書
イスラム教クルアーン
(クルアーン、モーセ五書(旧約聖書)、詩編、福音書の4つは啓典)

呼び方の違い

教会の中の聖書

旧約聖書

新約聖書の中の「<コリント人への第2の手紙>3章14節」に記された「古い契約」という表現を元に2世紀ごろから旧約聖書という言葉が使われ始めた。

旧約聖書と呼ぶ場合、キリスト教からの立場のもので、ユダヤ教内では単に「聖書(タナハ)」と呼んでいる。キリスト教の聖書と区別された呼ばれ方では「ヘブライ語聖書」という呼び方もある。

キリスト教において単に「聖書」という場合、旧約聖書と新約聖書を一つの書物にしたものを指す。

新約聖書

旧約聖書が「古い契約」とされたのに対し、新約聖書はイエス・キリストによる「新しい契約」とされ、旧約聖書と同じく2世紀ごろからその名前が使われ始めた。

聖書の内容の違い

旧約聖書(39書)

十戒を受けられたモーセを描いたステンドグラス

十戒を受けられたモーセを描いたステンドグラス

紀元前1300年ごろ、迫害されていたイスラエルの民がモーセに率いられ、エジプトを脱出する。

モーセはシナイ山で神と出会い、神は彼らに救いを約束し、律法を守ることを約束させる。これが「古い契約」で、イスラエル民族の歴史などとともにユダヤ教の正典(タナハ)になる。

旧約聖書の構成
モーセ五書
(5書)
天地創造や神から授けられた律法など
有名なものに「アダムとイブ」「カインとアベル」「ノアの箱舟」「モーセの十戒」などがある
歴史書
(12書)
約束の地についてからのイスラエル民族の歴史
諸書
(5書)
神への賛美や祈りの言葉、人生の教訓など
預言書
(17書)
神の意志を伝える預言者の言葉
大預言書と小預言書に分かれる

新約聖書(27書)

磔刑にされるイエスが描かれたステンドグラス

磔刑にされるイエスが描かれたステンドグラス

紀元4年イエスが誕生(※)、ユダヤ教徒として育ち、厳しい律法を守ることだけが正義となりつつあったユダヤ教の教義に異を唱え殺された。

イエスの死後、弟子たちがイエスの教えを広め、キリスト教が始まる。

そのイエスの生涯と教えが書かれた書物で、一番古いものは「マルコによる福音書」で、68年に書かれたと言われている。

イエスが生まれた年を紀元としそれ以前を紀元前とするが、現在では4年のズレがあると言われている

新約聖書の構成
福音書
(4書)
イエスが誕生し十字架刑で処刑され復活するまで
イエスの言葉と生涯が綴られている
有名なものに「受胎告知」「最後の晩餐」「磔刑」などがある
歴史書
(1書)
イエスの死後、弟子たちの働きを記した「使徒言行録」
書簡
(21書)
弟子たちがイエスの教えを伝道する中で書いた手紙
「パウロの手紙」とパウロ以外の「公同書簡」に分かれる
預言書
(1書)
この世の終末を予言した「ヨハネの黙示録」