「伊勢神宮」と「出雲大社」の違いって?
伊勢神宮(いせじんぐう)【神宮】 | 三重県伊勢市にある神社。天照大御神(あまてらすおおみかみ)と豊受大御神(とようけのおおみかみ)をおまつりしている。二礼二拍手一礼で参拝する。社殿は唯一神明造(ゆいいつしんめいづくり)。遷宮は20年に一度。注連縄(しめなわ)・おみくじがない。 |
---|---|
出雲大社(いずもたいしゃ)【いづもおおやしろ】 | 島根県出雲市にある神社。大国主神(おおくにぬしのかみ)をおまつりしている。二礼四拍手一礼で参拝する。社殿は大社造。遷宮は60~70年に一度。注連縄・おみくじがある。 |
記事の目次
概要
伊勢神宮とは?
伊勢神宮とは、三重県伊勢市にある神社である。内宮(ないくう)や外宮(げくう)(※1)など、全125社で構成されている。正式名称は「神宮」という。
1 正式には、内宮は皇大神宮(こうたいじんぐう)、外宮は豊受大神宮(とゆけだいじんぐう)という。内宮と外宮は正宮(しょうぐう)と呼ばれ、伊勢神宮の中心的な存在である。
内宮の創祀(そうし:神様をまつり始めること)は、今から約2000年前とされる。はじめから現在の地にあったわけでなく、しばらくは各地を転々としていた。伊勢に鎮座(ちんざ)したのは、4世紀初頭のことである。また、外宮の創祀は今から約1500年前とされる。
古くから皇室より尊崇(そんすう:尊びあがめること)を受けており、他の神社とは一線を画す存在である。三種の神器(=皇位のしるしとして、歴代天皇に受け継がれてきた宝物)の一つ・八咫の鏡(やたのかがみ)をご神体(=神霊が宿っているとされる物体)としている。
出雲大社とは?
出雲大社とは、島根県出雲市にある神社である。一般的には「いずもたいしゃ」と呼ばれるが、正式には「いづもおおやしろ」と読む。
かつては「大社」というと、出雲大社を意味した。出雲大社と称するようになったのは明治のことで、それ以前は杵築大社(きずきたいしゃ、きずきのおおやしろ)などと呼ばれていた。
出雲大社の創祀ははっきりせず、神話時代とされる。大国主神(おおくにぬしのかみ)が出雲地方を天照大神(あまてらすおおみかみ/天照大御神とも)に譲った(=国譲り神話)代わりに、大きな社を建てたのがはじまりという。
旧暦10月(神無月/かんなづき)(※2)になると、全国の神々が出雲大社に集まり、縁結びの話し合いをするといわれている。そこで出雲では、旧暦10月を神在月(かみありづき)という。
2 神様がいなくなる月なので「神無月」という俗説がある。
伊勢神宮と出雲大社の違い
伊勢神宮と出雲大社は、どちらも由緒のある神社である。数ある神社の中でも、特別視される存在という点では同じだが、下記のような違いもみられる。
ご祭神
伊勢神宮と出雲大社は、おまつりしている神様が違う。なお、ここでは主祭神(=主におまつりする神様)を紹介する。
- 内宮(伊勢神宮):天照大御神(あまてらすおおみかみ)
- 外宮(伊勢神宮):豊受大御神(とようけのおおみかみ)
- 出雲大社:大国主神(おおくにぬしのかみ)
伊勢神宮は、内宮と外宮でおまつりしている神様が違う。内宮のご祭神は太陽をつかさどり、皇室の祖先神とされる天照大御神(あまてらすおおみかみ)である。また外宮のご祭神は、衣食住や産業などをつかさどる豊受大御神(とようけのおおかみ)である。
出雲大社のご祭神は、農業や縁結びなどをつかさどる大国主神(おおくにぬしのかみ)である。「だいこくさま」とも呼ばれ、神話「因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)」でうさぎを助けたことでも知られる。天照大御神の弟・素戔嗚尊(すさのおのみこと)の子孫でもある。
参拝の作法
伊勢神宮と出雲大社は、参拝の作法も異なる。まず一般的な神社では、二礼二拍手一礼(下記)が作法とされている。
- 二礼二拍手一礼とは?
- 会釈をする
- 90度のお辞儀を2回する
- 胸の前で2回拍手をし、日頃の感謝とお願いごとをする
- 90度のお辞儀を1回する
- 会釈をする
伊勢神宮では、一般的な神社と同様に、二礼二拍手一礼の作法で参拝をする。
一方で出雲大社では、二礼四拍手一礼の作法で参拝をする。普通は2回拍手をするところが、4回に増えるというわけである。
社殿の建築
伊勢神宮と出雲大社は、社殿の建築様式も異なる。伊勢神宮の社殿は、唯一神明造(ゆいいつしんめいづくり)(※3)である。
一方で、出雲大社の社殿は大社造(たいしゃづくり)である。下記のような違いはあるが、どちらも日本古来の建築様式を今に伝えるものである。
3 「神明造」は他の多くの神社でも多く使用されているが、特に伊勢神宮の建築様式を「唯一神明造」と呼ぶ。
出典:神社本庁「社殿について」
唯一神明造 | 大社造 | |
---|---|---|
原形 | 高床式の穀倉 | 古代の住居 |
屋根 | 切妻造(本を開いて伏せたような形) | |
入口 | 平入り(屋根の傾斜側にある) | 妻入り(屋根の傾斜側ではない側にある) |
他の特徴 |
|
|
遷宮の周期
伊勢神宮と出雲大社は、遷宮(せんぐう)の周期も異なる。遷宮とは、ご神体を古い社殿から新しい社殿へと移すことをいう。その際、社殿や神宝も新しくする。
伊勢神宮の遷宮は、20年に一度である。一定の期間ごとに行われるため、式年(しきねん)遷宮と呼ばれる。長い歴史の中では周期が崩れたこともあるが、基本的には7世紀より続くしきたりである。
一方で、出雲大社の遷宮は一定期間ごとに行われていない。ただし、近年は60~70年に一度である。
- 出雲大社の近年の遷宮
- 1744年(前回から77年)
- 1809年(前回から65年)
- 1881年(前回から72年)
- 1953年(前回から72年)
- 2013年(前回から60年)
注連縄(しめなわ)の有無
伊勢神宮には注連縄(しめなわ)がない。注連縄の代わりに榊(さかき)が、神聖な場所を示すために用いられている。
一方で、出雲大社には注連縄がある(1-2.出雲大社とは参照)。特に、神楽殿にある注連縄は国内最大級(長さ13.6メートル、重さ5.2トン)であり、一般的な注連縄とは逆向き(左から右へと綯(な)う)に張られていることでも知られている。
おみくじの有無
伊勢神宮には昔からおみくじがない。かつては「一生に一度はお伊勢参り」と言われるほど、伊勢神宮への参拝は庶民の憧れであった。そのため大吉でないはずがない、とも言われている。
一方で、出雲大社にはおみくじがあるが、吉凶は書かれていない。
まとめ
伊勢神宮(神宮) | 出雲大社(いづもおおやしろ) | |
---|---|---|
所在地 | 三重県伊勢市 | 島根県出雲市 |
創祀 | 【内宮】約2000年前 【外宮】約1500年前 | 神話時代 |
主祭神 | 【内宮】天照大御神 【外宮】豊受大御神 | 大国主神 |
参拝の作法 | 二礼二拍手一礼 | 二礼四拍手一礼 |
社殿の建築様式 | 唯一神明造 | 大社造 |
遷宮の周期 | 20年に一度(式年遷宮) | 近年は60~70年に一度 |
注連縄の有無 | ある | ない |
おみくじの有無 | ない(常に大吉) | ある(吉凶はない) |