「ラット(rat)」と「マウス(mouse)」の違いって?
- いずれも日本語にするとネズミ。実験に利用される動物として有名。
ラット(rat) | ドブネズミを品種改良してつくった大型のネズミ。中央の歯はくさび形をしているなどの特徴がある。発生工学の実験にはあまり用いられない。 |
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マウス(mouse) | ハツカネズミを品種改良してつくった小型のネズミ。中央の歯は板状で2段階になっているなどの特徴がある。発生工学の実験に用いられる。 |
記事の目次
概要
ラットとは
ラットとは、ドブネズミを品種改良したネズミである。実験動物や愛玩動物として飼育されている。英語圏では、ラットは汚い、害獣というイメージであり、裏切者・卑怯(ひきょう)者という意味もある。
マウスとは
マウスとは、ハツカネズミを品種改良したネズミである。実験動物や愛玩動物として飼育されている。英語圏では、マウスはかわいらしいイメージ(例:ミッキーマウス)であり、臆病者という意味もある。
ラットやマウスと同様、実験動物の代名詞といえるのがモルモットである。モルモットはテンジクネズミとも呼ばれることからもわかるように、齧歯(げっし)目テンジクネズミ科の哺乳類である。一方、ラットとマウスは齧歯(げっし)目ネズミ科の哺乳類である。
ラットとマウスの違い
ラットとマウスを日本語にすると、どちらも同じく「ネズミ」である。さらに、いずれも実験として利用される動物という点で区別がしづらいが、下記のような違いがある。
本来の種
ラットはドブネズミを原種とするネズミであり、マウスはハツカネズミを原種とするネズミである。
一般的に大型とされるドブネズミを品種改良したラットは、ハツカネズミと比較すると大型である。他方で、一般的に小型とされるハツカネズミを品種改良したマウスは、ドブネズミと比較すると小型である。
ラット | マウス | |
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体長 (尻尾を除く) | 20~25cm | 7cm程度 |
体重 | 200~700g | 16~45g |
原種の違いより、ラットとマウスには、例えば下記のような身体的な違い・生態の違いもみられる。
ラット | マウス | |
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門歯(=中央の歯) の裏側の形状 | 楔状(けつじょう) :根元は太く、先端は尖(とが)っている | 板状・2段階で厚みが変わる |
胆嚢(たんのう) | なし (独立した臓器としては存在せず、肝臓内部に埋もれている) | あり |
尿の臭い | 強くない | とても強い |
闘争本能 | 弱い | 強い |
乾燥に対して(※) | 弱い | 強い |
湿気に対して(※) | 強い | 弱い |
野性のときの生息域の違いに起因する。ドブネズミは下水などの湿った環境に生息している一方、ハツカネズミは穀物倉庫などの乾いた環境に生息している。
適した実験
数ある実験のなかでも、発生工学(=生物の個体の発生過程に実験的操作を加え、新知識を得ようとする学問の分野)の研究に利用されているのは、ほぼマウスである。
ラットは遺伝子の改変が難しいため、発生工学の分野ではあまり利用されていない。他方でマウスは遺伝子の改変がしやすいため、発生工学の分野で利用されている。
なお、かつては大型であるラットは、病態学・病理学の研究(例:がん)に利用されることが多かった。他方で多様な系統が存在するマウスは、遺伝学や免疫学の研究に利用されることが多かった。現在は技術の進歩によって、両者の差はなくなりつつある。
まとめ
ラット | マウス | |
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原種 | ドブネズミ | ハツカネズミ |
大きさ | 大型 | 小型 |
門歯の裏側の形状 | 楔状 | 板状・2段階 |
胆嚢 | なし | あり |
尿の臭い | 強くない | とても強い |
闘争本能 | 弱い | 強い |
乾燥 | 弱い | 強い |
湿気 | 強い | 弱い |
発生工学の実験 | あまり利用されない | 利用される |
適するとされていた分野 | 病態学・病理学 | 遺伝学・免疫学 |