「大道具」と「小道具」の違いって?
大道具 | 演者の後ろにセットとして組む、持ち運ぶことが難しい大掛かりな道具のこと。歌舞伎から来た言葉。 |
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小道具 | セットに置いたり演者が持ったりする物で、持ち運ぶことが可能な小型の道具全般のこと。能や狂言から来た言葉。 |
記事の目次
言葉の意味
大道具
演者の後ろにセットとして組まれている、持ち運ぶことが難しい大掛かりなものを指す。
山や川などの風景をベニヤ板に書きつけて立てておく「書き割り」や、バレエティ番組などで見られる室内を模して組み上げたセットや棚が大道具と呼ばれる。これらはデザイン画をもとに設計され、装置を組み上げても、終了後は簡単にばらして撤収できるように作られている。
小道具
演者が持ったりセットに置かれていたりするもので、持ち運ぶことが可能な小型の道具全般のことを指す。
大道具のように重くて簡単に動かせないようなもの以外で、スタジオや舞台の空間に置かれるているもの全般を小道具と呼んでいる。小さな家具や調度品、演者のもつ杖や銃など、衣装とかつら以外の身につけているものが含まれる。
「大道具」と「小道具」は舞台装置だけでなく道具そのものを製作する人のことも指す。テレビ番組や映画、舞台では「美術」と呼ばれる部門があり、監督から依頼された美術セットや装飾を製作(美術監督や美術デザイナーのもとで)するのが「大道具」「小道具」の役割である。
大道具と小道具の由来
大道具は歌舞伎から
大道具は歌舞伎において使われ始めた言葉で、歌舞伎の中での使われ方は一般的な使われ方よりも少し範囲が広い。劇場に常備される「回り舞台(回転する機構)」「セリ(舞台の一部をくり抜いて昇降装置をつけたもの)」「引幕(左右に開閉する幕)」など、大型の舞台装置も大道具に含まれる。
初期の歌舞伎は能舞台(※)をほぼそのまま使っており、演目も一幕物(場面転換がなく一幕で完結する演劇のこと)ばかりだった。しかし、1660年ごろから脚本が複雑化し、それに伴い舞台装置も徐々に発達していき「大道具」が使われ始めたという。
能には歌舞伎のような大掛かりな舞台装置はほとんどなく、「作り物」という竹の枠で作る小さめのセットがある。
小道具は能楽から
能楽(能や狂言)において古くから使われる言葉で、面と装束とかつら以外の小物(扇や武器、宝珠、鏡、法具など)を小道具と呼んでいた。実物と同じ形をしているが、演技のために軽く扱いやすく作られているものである。あらかじめ作ったものを保管しておき、演能のたびに取り出して使っていた。
歌舞伎においては能や狂言より小道具の種類は増える。家具や置物、掛け軸など大道具と一緒に置かれる「出道具(でどうぐ)」や、アクセサリーやカバン、靴など演者が身につける「持ち道具」に分かれている。この他に「武具」や「冠り物」も小道具に含まれる。
歌舞伎舞踊『関の扉』で舞台中央に置かれる桜の大木は「大道具」が作り、演者が枝を折って踊りに使うものは「小道具」が写実的に作るという役割がある。