「浄土宗」と「浄土真宗(一向宗)」の違いって?

POINT
浄土宗法然(ほうねん)を開祖とする日本仏教の宗派。専修念仏を主な教えとする。
浄土真宗(一向宗)法然の弟子である親鸞(しんらん)を開祖とする日本仏教の宗派。絶対他力を主な教えとする。

微笑むお地蔵さん

浄土宗と浄土真宗(一向宗)の違い

浄土宗と浄土真宗(一向宗)は、ともに本尊(信仰の対象)を阿弥陀如来(大乗仏教の中でも特に重要な仏「阿弥陀仏」の尊称)とする日本仏教の宗派である。名前もよく似ているので、両者の違いがわからない人も多い。しかし両者の間には、例えば下記のような違いがある。

開祖

浄土宗の開祖は法然(ほうねん)【1133~1212】、別名を源空(げんくう)という。

法然

法然

一方で浄土真宗の宗祖は法然の弟子・親鸞(しんらん)【1173~1262】である。

親鸞

親鸞

法然の死後、浄土宗は“念仏に対する考え方”を巡って、いくつかの派に分かれた。そういった意味では、浄土真宗も浄土宗の一派である。とは言うものの、親鸞には開宗の意志はなく、実質的な開祖は彼の曽孫(ひ孫)・覚如(かくにょ)である。

なお、浄土真宗は「真宗」とも言うことがあり、かつては「一向宗(いっこうしゅう)」「門徒宗(もんとしゅう)」とも呼ばれていた。

主な教え

教えのイメージ

浄土宗の教えといえば、専修念仏(せんじゅねんぶつ)である。専修念仏とは、ただひたすら「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えることをいう。浄土宗では、これ以外の修業は一切必要ないとしている。

他方で浄土真宗の教えといえば、絶対他力(ぜったいたりき)の思想である。絶対他力とは、すべてを阿弥陀如来に任せることをいう。浄土宗は念仏という行いを重んじている一方、浄土真宗では阿弥陀如来への信心を重んじていると言える。

また浄土真宗では、開宗当初から肉食妻帯(にくじきさいたい)を認めていたのも特徴である。今でこそ僧侶であっても肉を食べ、結婚することができる。しかし、これが許可されたのは明治5年(1872)のことであり、それ以前は浄土真宗と修験道(しゅげんどう)くらいでしか認められていなかった。

葬儀について

葬儀への考え方

葬儀のイメージ

両者の葬儀における大きな違いは、授戒・引導の儀式の有無である。これには浄土宗との違いというよりも、他の宗派とも大きく異なる“浄土真宗の葬儀への考え方”の違いが背景にある。

そもそも浄土真宗では、人は死と同時に阿弥陀如来によって極楽浄土へと導かれる(往生即成仏)と考えられている。よって葬儀において、死者の成仏を願う必要はないため、授戒(仏門に入る者に戒律を授けること)・引導(死者が悟りを開けるよう、法語を唱えること)の儀式は行われない。葬儀はあくまでも、故人の徳を偲ぶために行われるものとされているのである。

他方で浄土宗の葬儀では、授戒・引導の儀式が行われる。これは浄土宗では、浄土真宗のように“死者はすぐに極楽浄土に導かれる”とは考えていないため、葬儀で死者の成仏を願う必要があるからである。

焼香のマナー

焼香のイメージ

浄土宗の葬儀においては、焼香は基本的に3回(地域や寺院によって異なる場合あり)とされている。親指・人差し指・中指の3本の指で香をつまみ、その手を仰向けにする。そしてもう片方の手を下から添え、額に押しいただいてから香炉にくべる。

他方で浄土真宗の焼香の仕方は、内部の宗派(代表的なのは「本願寺派」「大谷派」、他にも「高田派」「興正派」「佛光寺派」などいくつかの宗派がある)によって異なっている。

まず本願寺派ではつまんだ香は額に押しいただかず、そのまま1回だけ香炉にくべる。また大谷派でもつまんだ香は額に押しいただかず、そのまま2回香炉にくべる。ただし、こちらも地域によっては異なるため、気になる場合はあらかじめ確認しておくことが望ましい。

香典の表書き

香典の表書き

葬儀の際、遺族に対して渡す香典の表書きにも注意が必要である。浄土宗では、「御霊前」もしくは「御香典」と書く。これは他の宗派にも共通するが、死者は亡くなって49日後に仏様になると考えられているからである。つまり葬儀の時点では、死者はまだ仏様にはなっていないため、「御霊前」と書くのが一般的である。

他方で浄土真宗では、遺族に渡す香典の表書きは「御仏前」や「御香典」と書く。これには先ほど述べた、往生即成仏という考え方が大きく関係している。すなわち浄土真宗では、葬儀の時点で死者はすでに仏様になっていると考えるので、一般的な「御霊前」という表記はふさわしくないと言える。

戒名と法名

葬儀への考え方でも述べた通り、浄土宗の葬儀では授戒が行われるが、浄土真宗の葬儀では行われない。そのため浄土宗では戒名(受戒したものに与えられる名前)が付けられるが、浄土真宗では戒名が与えられないことになる。

浄土宗の戒名
院号+誉号+道号+法号+位号(※1)

1 位号の種類…信士/信女・居士(こじ)/大姉(だいし)・禅定門/禅定尼

浄土真宗ではそれに代わり法名(仏弟子としての名前)を授かることになっている。

浄土真宗の法名
院号+法名(※2)

2 法名の種類…釈・院釈

まとめ

浄土宗浄土真宗
本尊阿弥陀如来
開祖【師】法然(源空)【弟子】親鸞
教え専修念仏(行い)他力本願(信心)
授戒・引導の有無ありなし
焼香のマナー基本3回
香を額に押しいただく
【本願寺派】1回
【大谷派】2回
香は額に押しいただかない
香典の表書き
(葬儀で遺族に渡すもの)
御霊前・御香典御仏前・御香典
戒名の有無ありなし(法名)