「カルテル」と「トラスト」と「コンツェルン」の違い

POINT
カルテル
(企業連合)
同一産業内の企業同士が価格や生産量について協定を結び、自由競争を避けること。独占禁止法によって禁止されている。
トラスト
(企業合同)
同一産業や同一業種の企業同士が合併などを行って、市場の価格や供給量などを左右することになってしまうこと。独占禁止法によって禁止されている。
コンツェルン
(企業連携)
巨大なひとつの資本が株式の保有などを通じて、いくつもの産業分野の企業を傘下に入れること。かつては禁止されていたが、解禁された。

肩を組むおじさんたち

カルテル・トラスト・コンツェルンは、いずれも巨大資本が市場を寡占(※1)している形態のことである。しかし寡占の主体は誰なのか、法律による規制を受けるのかという点には違いがみられる。

1 少数の売り手が市場を支配し、互いに競争している状態。

カルテルとは

カルテルのイメージ

カルテルは企業連合ともいい、同一産業の複数企業が製品の価格や生産量、販路などについて協定を結ぶことである。

本来、それらは各企業が自主的に決定し、市場では自由競争(販売者と購入者の需要供給によって市場価値が決まること)が行われるべきである。

しかし大企業同士が自由競争を避け、自分たちだけが高い利潤を得ようとしてカルテルを結成するおそれがある。

そのため、カルテルは独占禁止法(※2)によって禁止されている。

2 独占禁止法とは1947年に制定された法律で、正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」という。市場の独占・不公正な取引を制限することで、自由競争の促進および消費者や中小企業の保護を目的としている。

トラストとは

トラストのイメージ

トラストは企業合同ともいい、同一産業や同一業種の企業同士が合併することである。

合併を行うと生産コストが低下する、と一般的に考えられている。それにより、利潤を大きくできるため企業は合併する。

企業間の合併は自由に行えるのが原則である。しかし、それによって市場価格や供給量を左右できるような場合、独占禁止法によって禁止されている。

そこで一定の要件に該当するような合併等を行う場合には、公正取引委員会に届出・報告を行う必要がある。

コンツェルンとは

コンテェルンのイメージ

コンツェルンは企業連携ともいい、親会社が株式保有を通じて各産業の企業を支配し、自らの傘下におさめて形成される企業集団のことである。

それぞれの分野において個々の企業は独立しているように見えるが、実際には一つの巨大な資本のもとに統合されている。

第二次大戦前、日本に存在していた財閥はこれに近い。戦後においては禁止されていたものの、一部の場合(※3)を除いて持株会社の設立が1998年に解禁された。

持株会社とは株式保有を通じ、他の会社の事業支配を主たる事業としている会社のことである。「〇〇ホールディングス」などの社名を持つ会社は、その代表例である。

持株会社が解禁となった理由はバブル崩壊後の企業の組織再編を進め、国際的な競争力を持つ企業を育成するためであった。

3 持株会社の設立は原則として自由になったものの、依然として事業支配が過度に集中する場合は禁止されている。