「品種改良」と「遺伝子組み換え」の違いって?

POINT
品種改良より利用価値の高い、新しい品種(作物や家畜など)を作り出すこと。交配によって新品種を作り出す方法。
遺伝子組み換え品種改良のひとつ。生物などから必要な遺伝子を取り出し、改良したい品種に組み込んで新品種を作り出す方法。

頭陀袋に入った大豆

品種改良・遺伝子組み換えの概略

品種改良とは

品種改良とは作物や家畜などについて、より利用価値の高い(※1)、新たな品種を作り出すことである。

その方法としては様々なものがある(※2)が、従来の品種改良の多くは交配によって行われてきた。ただしこの方法によると、求める品種ができあがるまでに長い年月を必要とした。さらに交配が可能な品種間でしか、掛け合わすことができなかった。

1 収穫量の増加や飼育のしやすさの向上、病気に強い品種を作り出すことなど。

2 現在では放射線や化学薬品を用いる方法などもある。

品種改良の例

出典:農林水産省「「遺伝子組換え農作物」について

遺伝子組み換えとは

一方で、遺伝子組み換えとは品種改良の一つである。具体的な方法としては、生物などから目的の遺伝子を取り出し、改良したい作物に組み込むことで新たな品種を作り出す。

たとえば、除草剤の成分を分解する遺伝子を細菌から取り出し、植物の遺伝子に入れれば、除草剤に強い植物を作り出すことができる。

遺伝子組み換えの例

出典:農林水産省「「遺伝子組換え農作物」について

この方法によると、品種改良の範囲を大幅に広げることができるうえ(※3)、改良に必要な期間を短縮したり、生産コストを低く抑えたりすることができると期待されている。

3 従来は交配が可能な品種間でしか行えなかったが、異なる生物種との間でも可能となる。

遺伝子組み換えの問題点とは

その反面、遺伝子組み換えには以下のようなデメリットがあると考えられている。

遺伝子組み換えのイメージイラスト

生態系への悪影響

新しい品種を人為的に作り出すことで、生態系への悪影響が懸念されている。

たとえば遺伝子組み換えが行われた農作物が自生し、同種の植物と交雑することで生物の多様性に影響を及ぼすのではないか、との懸念がある。

また害虫に強い農作物を作り続けることで、それに対する抵抗力の強い害虫が発生するのではないかと危惧されている。

人体への影響

さらに遺伝子組み換えを口にすることで、人体に悪影響がないのかという懸念もある。

たとえば、害虫が食べると死ぬように遺伝子が組み換えられた作物を、果たして人間が食べても健康を害さないのかという疑問の声がある。

さらに、たとえそれを食べた本人にはなくとも、子や孫の代に影響は出ないのか、と不安視されている。

飼料としての安全性

懸念されているのは、人体への直接的な影響だけではない。

遺伝子組み換えの作物を、飼料として与えられた家畜がいたとする。その家畜の肉や卵を人間が食べることで、健康に害を及ぼさないかということも疑問視されている。

一部企業による食料支配

このほか、遺伝子組み換え技術を持っている化学メーカーの一部が食料を支配してしまうのではないかという懸念の声も上がっている。

遺伝子組み換え食品等への安全性への取り組み

このようにメリット・デメリットをあわせ持つ遺伝子組み換え食品等に対して、日本国内では各省により科学的な評価が行われている。すべての基準に照らし、問題がないと判断されたもののみ、商品化される。