「砂漠」と「砂丘」の違いって?

POINT
砂漠乾燥地帯の中で降雨量が極端に少なく、砂や岩石の多い荒れた地域のこと。年間降雨量が250mm以下の地域か、降雨量よりも蒸発量が多い地域によく見られる。
砂丘風によって移動した砂が積み上がり、丘のような形状(地形)になった場所。

千葉の館山砂丘

砂漠と砂丘の違い

砂漠
アタカマ砂漠(チリ)

アタカマ砂漠(チリ)

砂丘が地形なのに対し、砂漠は地域を指している。

一般的な定義では、世界の陸地の性質のうち「乾燥地帯」の中でより乾燥した部分の「極乾燥地帯と乾燥地帯」のことである。主に中緯度(20~30度)の地域にあり、水不足の乾燥地域であるため動植物の生存は難しく、人間の活動も制約される。年間降雨量が250mm以下の地域か、降雨量よりも蒸発量が多い地域である。

世界の主な16の砂漠

世界の主な16の砂漠

砂漠は英語でdesertといい、ラテン語で「見捨てられた土地」に由来している。単に砂漠というと砂の砂漠「砂(すな)砂漠」がイメージされることが多いが、他に「岩石砂漠」や「礫(れき)砂漠」の方が割合としては多い。

日本において砂漠の付く地名はあるが、砂漠に分類される場所はない

砂丘
鳥取砂丘(日本)

鳥取砂丘(日本)

砂漠が地域なのに対して、砂丘は土地の形状を指す。

風によって砂が運搬され、堆積した砂の高まりが丘や堤状になっている場所のことである。土地の形状で判別するため、砂丘は砂漠の中でも見られる。

砂漠が砂以外の岩石などがあるのに対し、砂丘は単に砂の高まりなので「砂」しかない。砂漠にある砂丘は乾燥地域なため水不足だが、砂漠以外の砂丘の降雨量は砂漠よりも多い場合が多い。

代表的な日本の砂丘
鳥取砂丘(鳥取県)・南遠大砂丘(静岡県)・吹上浜(鹿児島県)・猿ヶ森砂丘(青森県)など
代表的な世界の砂丘
デューン45 (ナミビアのナミブ砂漠内)・メルズーガ(モロッコのサハラ砂漠内)など

砂漠と砂丘の特徴

砂漠

最大の特徴は降雨量が少ないことと、その頻度が不規則なことである。年に数度から数年に一度の雨が一気に集中して降ることが多いため、洪水被害が起こりやすい。砂漠において水がある場所は「オアシス」と呼ばれ、場所が限られいることから人間の拠点となっている。

砂漠の中のオアシス

砂漠の中のオアシス

砂漠では、降雨量より蒸発する量が上回り、水分の最大の蒸発量は降雨量の500倍にもなるところもある。気温差が大きいのも特徴で、赤道に近くの低緯度にある砂漠は夏の日中が50℃を超え、冬の夜には氷点下になる場所もある。

砂丘

砂が十分にあり、風が強く、比較的乾燥した地域にできやすい。

一般的な堆積物は「小石(礫)」「砂」「シルト」で構成(※)される。それらが乾燥している状態で風が当たると、小さく軽いもののみが動き、より分ける作用「淘汰(とうた)」が起こる。

砂丘の砂は、他の環境の堆積物に比べ地形のできる過程で著しく淘汰され、直径0.125~0.5程度に粒の大きさがそろうのが特徴。日本の砂丘の場合、砂の粒は0.25mm前後のものが多く、5~8m/秒の風で淘汰される。

さらにその砂粒は、淘汰される過程で丸く磨かれ、ガラス状になったり、表面に不規則な穴や溝ができたりと、特徴的な形状になる。

小石(礫):粒径2mm以上の粒、砂:粒径2~0.074mmの粒、シルト:粒径0.074~0.005mmの粒

砂漠と砂丘の定義

砂漠
ゴビ砂漠

ゴビ砂漠

砂漠を定義する時、乾燥地帯を区分するが主に二つのものが使われる。

一つは1953年にメイグスが提唱した区分方法で、乾燥地帯を極乾燥・乾燥・半乾燥に区分したもの。

もう一つは1992年に国連環境計画(UNEP)が「砂漠化が発生する範囲」を決めるために出した区分で、乾燥地帯を超乾燥・乾燥・半乾燥・乾燥亜湿潤に分けた。

全陸地のうちメイグスの区分法では20.5%(極乾燥4.3%、乾燥16.2%)、UNEPでは19.6%(超乾燥4.3%、乾燥12.1%)が砂漠と定義される。

この他に、南極など寒い地域にも乾燥したところがあり「寒冷砂漠」と呼ぶが、砂漠には含まないことが多い。

名称

単に「砂漠」というと砂砂漠だけでなく他の岩石砂漠なども含む総称として使われるが、一般に想像される砂漠は砂砂漠が多いため、総称として使う場合「沙漠」を使う研究者もいる。当用漢字制定前は「沙漠」の方が多く使われたが、当用漢字から外れたため「砂漠」が使われるようになった。

砂丘
ナミブ砂漠の砂丘

ナミブ砂漠の砂丘

砂漠が区分された地域を指すのに対し、砂丘は「砂の高まり」となった地形を指すため、明確な範囲はない。その地形の規模や形態は、「砂の供給量」「風の安定性・強さ」「植生の量」などによって違いが出る。

砂丘は砂漠の中にもみられ、砂砂漠の中の砂丘は、規模も大きく形態が複雑なものが多い。

砂の高まりは「砂丘」、平たんなものは「砂床(さしょう)」、それらが連なり広い範囲になると「砂海(さかい)」と呼ぶ。

砂漠と砂丘の種類や分類

砂漠
地質的な種類

露出した基盤岩や取り残された大きい岩石で構成される「岩石砂漠」、たくさんの礫(小石)で構成される「礫砂漠(れきさばく)」、砂丘と砂床で構成される「砂砂漠(すなさばく)」に分かれる。

アメリカザイオン国立公園

岩石砂漠:アメリカザイオン国立公園

黒砂漠(礫砂漠)

礫砂漠:黒砂漠

サハラ砂漠(砂砂漠)

砂砂漠:サハラ砂漠

成因による分類

成因の違いでは以下の4つに分類され、それぞれの砂漠ではこれらのものが2つか3つ重なるものが多い。

亜熱帯砂漠
亜熱帯高圧帯(低緯度の地域)にあり、下降気流の影響で乾燥地帯となっている地域。
(例)サハラ砂漠、オーストラリアの砂漠など
海岸冷涼砂漠
沖合の冷たい海の大気が降水できない環境で乾燥地帯となっている地域。
(例)ナミブ砂漠、アカタマ砂漠など
雨陰砂漠
山脈の風下側で地形の影響で乾いた風が吹いてくる地域。
(例)パタゴニア砂漠など
大陸内部砂漠
海からの風が途中で湿気を落とした状態で達するたに乾燥した地域。大陸の中央部に見られる。
(例)タクラマカン砂漠、ゴビ砂漠など
砂丘
さまざまな特徴による分類

砂丘がある場所別に分類して、「砂漠砂丘」「内陸砂丘」「海岸砂丘」「河畔砂丘」「湖畔砂丘」に分かれる。

さらに移動の有無で「移動砂丘(現成のもの)」と「固定砂丘(植生で移動が止まったもの)」、形成時代によっては「古砂丘」「旧砂丘」「新砂丘」、多数の砂丘が平行する「並列型」や古い砂丘の上に新しい砂丘が重なる「累積型」などさまざまな性質で分類されている。

形状による分類
ナミブ砂漠の砂丘

ナミブ砂漠の砂丘

バルハン砂丘
基本の形態で、緩やかな斜面になっているもの
縦砂丘
風速が大きいと卓越風向(ある程度の期間を通して一番吹きやすい風向き)に平行に長く伸びた形になった砂丘。
横砂丘
砂の供給量が多いと、バルハン砂丘が横に連結して長く横に伸びた形になった砂丘。卓越風向と直向している。
パラボラ砂丘
砂漠が植生で覆われている場合などで一部の植生が破壊され風食作用が集中的に進んで凹んだ地形からその風下にパラボラ上の形状が現れた砂丘。
星型砂丘
季節で卓越風向が変わる場所で星型のような形態になった砂丘。
ネブカ砂丘
障害物に砂の移動がぶつかり、障害物の後ろに尾を引いたような形状になった砂丘。