「御社」と「貴社」の違いって?

POINT
御社相手方の会社を敬って使う表現で、主に会話の中で使われる。
貴社相手方の会社を敬って使う表現で、主に文章の中で使われる。

名刺交換の様子

共通点

御社(おんしゃ)と貴社(きしゃ)は、いずれも相手方の会社や神社のことを敬って使う言葉である。なお、自分の会社をへりくだるときに使うのは弊社(へいしゃ)である。

相違点

両者の最大の違いは、それぞれの言葉が用いられる場面である。御社は口頭、すなわち会話の中で使われることが多い。これに対して貴社は、商用文などの書面で使用されることが多い。

話し言葉と書き言葉

就職・転職活動中であれば、電話や面接の際には「御社」と呼び、履歴書を書く際やメールを送る時は「貴社」と書くと良い。ただし、相手が会社でない場合には、下記のように表現されることもあることに注意したい。

  • 銀行:御行・貴行
  • 学校:御校・貴校
  • 病院:御院・貴院・貴医院
  • 役所:御庁・貴庁

このように、話し言葉は頭に「御」、書き言葉には「貴」を付けることが一般的である。

例文

  • 「○月○日○時に御社に伺います。」
  • 「私が御社を志望した理由は・・・・・・」
  • 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
  • 末筆ながら貴社のますますのご繁栄をお祈り申しあげます。

特に「貴社」は、ビジネス文書で使われる、定型的な挨拶や締めの言葉の中によく見られる。上記の二つはその例である。

言葉の由来と使い分けられるようになった理由

御社の「御」とは、日本古来の敬語表現である。例えば、「お父さん」「お母さん」の「お」は本来「御」と書く。

これに対して貴社の「貴」は、漢文の中によく見られる敬語表現であるという。現在は上記でも説明したように、御社は話し言葉、貴社は書き言葉として使い分けがなされている。

しかし、かつては会話の中でも「貴社」が使われていたそうである。だが、「キシャ」というと「記者」「汽車」「帰社」などの同じ音を持つ言葉も多くある※ので、混同しやすい。そこで1990年代頃から、話し言葉として「御社」が使われるようになったといわれている。

「オンシャ」と同じ音を持つ言葉としては「恩赦」「音写」などがあるが、ビジネスシーンでは使われる可能性が低い。