「芥川賞」と「直木賞」の違いって?

POINT
芥川賞純文学作品を対象とした文学賞のこと。新進作家の短・中編作品の中から選ばれる。受賞後は「文藝春秋」に全文が掲載される。
直木賞大衆文学作品を対象とした文学賞のこと。新進・中堅作家の短編~長編作品の中から選ばれる。受賞後は「オール讀物」に一部が掲載される。

本の上に置かれたメガネ

芥川賞と直木賞の共通点

古びた原稿用紙

芥川賞(正式名称:芥川龍之介賞)と直木賞(正式名称:直木三十五賞)は、ともに作家の登竜門と言われる、日本文学界で権威のある文学賞である。いずれも昭和10年(1935)当時、文藝春秋を主宰していた作家・菊池寛(かん)のが二人の業績を記念して創設した。運営は文藝春秋社内にある、日本文学振興会が行っている。

両者はいずれも、期間内(【上半期】前年12月から5月まで【下半期】6月から11月まで)に雑誌・書籍など(詳しくは下記選考対象となる作品・作家の条件を参照)で発表された作品を対象としており、公募によるものではない。

また授賞は上半期(1月中旬)と下半期(7月中旬)の年2回であり、正賞は懐中時計、そして副賞は100万円という点も同じである。さらに、選考も同じ料亭(東京・築地の新喜楽)で行われているところまで一緒である。

芥川龍之介について
芥川龍之介の写真

芥川龍之介(1892-1927)

芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)は、大正時代を代表する作家。題材によって様々な様式を使い分けるなど、新技巧派(=理知的な技巧を重視した、文学の一流派)として知られた。代表作は『羅生門』『地獄変』『河童』など。

直木三十五について
直木三十五の写真

直木三十五(1891-1943)

直木三十五(なおきさんじゅうご)は、時代小説が知識階級にも読まれるほど、その内容を高め、大衆文学の向上に貢献した人物。代表作は幕末、薩摩藩で起きたお家騒動(=お由良騒動)を題材とした時代小説の『南国太平記』など。

芥川賞と直木賞の違い

積み重なった本

このように多くの共通点を持つ両者ではあるが、下記のような点においては違いがみられる。

受賞作品のジャンル

両者の最大の違いは、受賞作品のジャンルの違いにある。

芥川賞は純文学(=読者を楽しませるためというよりも、純粋な芸術性を目的とした文学)を対象としている。

一方で直木賞は、大衆文学(=読者を楽しませることを目的とした文学)を対象としている。

このように両者はジャンルが異なるため、同時に両方を受賞することはできない。ただし純文学と大衆文学との間に、明確な違いが存在するわけではないことも付け加えておきたい。

選考対象となる作品・作家の条件

また両者は、対象となる作品の条件についても違いがみられる。

まず芥川賞だが、雑誌に発表された新進作家(=新しく世の中に認められた作家)による短・中編作品(長さについての明確な規定はない)が選考の対象となっている。

一方で直木賞は、単行本として発表された新進作家から中堅作家による短編~長編作品が選考の対象となっている。

受賞作品の掲載について

受賞した作品は、いずれも文藝春秋社の発行する雑誌に掲載されるが、その雑誌と掲載量は異なる。

芥川賞は「文藝春秋(ぶんげいしゅんじゅう)」に全文が掲載されるが、直木賞は「オール讀物(よみもの)」に一部が掲載される。

まとめ

芥川賞
(芥川龍之介賞)
直木賞
(直木三十五賞)
共通点創設年昭和10年(1935)
創設者菊池寛(きくちかん)
運営日本文学振興会
授賞年2回(1月中旬・7月中旬)
【正賞】懐中時計【副賞】100万円
相違点ジャンル純文学大衆文学
選考対象作品雑誌に発表された中・短編作品単行本で発表された短編~長編作品
受賞できる作家新進作家新進作家から中堅作家
受賞後の掲載文藝春秋に全文オール讀物に一部